「足関節捻挫」、スポーツをやっている方の多くが一度は経験する障害です。捻挫は軽視されがちで、捻挫後も治療をせずにプレーを続けてしまう方は多いです。しかし、捻挫を甘く見てはいけません、適切な処置、リハビリを行わなければ後遺症が残ってしまいます。今回は捻挫によってどのような機能が障害され、慢性化するとどうなるか、慢性化させないために予後をどう判断するかを解説していきます。
慢性足関節不安定症(CAI)
捻挫を放置したままにしておくと捻挫を繰り返すようになり、慢性足関節不安定症(CAI)へ進行する危険性があります。CAIは捻挫による構造的、機能的な障害により頻回に再受傷や足関節のgiving way繰り返すことによって、日常生活やスポーツ動作に支障をきたす症状です。CAIは構造的破綻によるMAI、機能的破綻によるFAIに区別されます。MAIは靭帯など解剖学的に関節を構成している組織の損傷により、関節不安定性を引き起こします。FAIは筋力低下、固有受容器の機能低下等により関節不安定性を引き起こします。この2点と主観的感覚が混合することで、CAIとなり後遺症が残ってしまいます。
足関節内反捻挫
足関節捻挫で最も頻度は多いのは内反捻挫です。内反捻挫では、足関節外側に位置する靭帯を障害しやすく、この靭帯が障害されると固有受容器の機能低下により深部感覚の低下を認めます。足関節外側に位置する足関節外側靭帯は前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯で構成され、内反捻挫では特に前距腓靭帯、踵腓靭帯が障害されやすいです。他にも外果骨折や剥離骨折、腓骨筋腱脱臼などが内反捻挫時に確認されることがありますが、出現頻度としては靭帯損傷が最も多いです。靭帯損傷後に適切なリハビリを行わないと、筋力や深部感覚の低下、可動域制限によりバランス障害をきたします。
深部感覚、メカノレセプター
足関節外側靭帯の付着部には、メカノレセプターが多く存在します。メカノレセプターとは固有受容器のことで、関節位置覚など深部感覚の受容器の役割を果たしています。内反捻挫により外側靭帯が損傷すると、メカノレセプターも損傷し機能低下を起こします。すると深部感覚が低下し、関節の位置を正確に認識することが困難となります。
足関節背屈制限
足関節背屈時には、距腿関節にて距骨が内果と外果の間に入り込むことで背屈を生み出し、距腿関節に骨的な安定性をもたらします。しかし、内反捻挫を放置したり繰り返すと、周囲の筋や腱、脂肪体の滑走不全が残存し、距骨が内果と外果の間に入り込まなくなります。すると背屈可動域制限が生じ、足関節の骨的な安定が得られず不安定性を認めるようになります。
giving way
giving wayとは、挫きやすい状態のことです。歩行中やスポーツ中に挫きやすくな流ため、足関節捻挫のリスクが非常に高くなります。
足関節内反捻挫
↓
機能障害(筋力、深部感覚低下、可動域制限)
↓
足関節捻挫再発
↓
繰り返すgiving way
↓
慢性足関節不安定症(CAI)
上のような機序で足関節捻挫→慢性足関節不安定症へ進行していきます。この進行を止めるためには、最初の捻挫後に適切な処置、リハビリを行うことです。そうすることで捻挫による機能低下を最小限にし、再発を予防することができます。
リハビリは受傷後3ヶ月が勝負
受傷後に行うリハビリで、特に大切なリハビリは神経筋コントロール系、機能障害で表すと深部感覚低下やバランス障害に対してのアプローチが大切になってきます。捻挫による靭帯損傷により、受傷直後から深部感覚が低下します。そのため、炎症状態や疼痛を確認しながら、バランスディスクなどを使用したバランス練習、神経筋系のトレーニングを受傷後3ヶ月継続することが大切です。
予後予測
リハビリを行っていて、順調に経過しているか不安になることもあるかと思います。もし、下に書いたテストができない、うまくいかない場合、慢性足関節不安定症へ進行しやすくなっているため早急な対応が必要です。
- 受傷2週時にdrop vertical jump が遂行困難
- 受傷6ヶ月後にstar excursion balance test における後外方リーチ距離の短縮
上記のテストが困難な場合、捻挫により低下した機能の回復が遅れている、着目している問題点が間違っている可能性があります。問題点を見直し、適切なリハビリを行ってください。
終わりに
たかが捻挫と軽視してはいけません。一つの捻挫からパフォーマンスの低下や、選手生命を短くしてしまう怪我に繋がることもあります。捻挫をしたらすぐに処置、早期からリハビリを行い、後遺症が残らないようにケアを行なっていきましょう。ありがとうございました!!
理学療法士 秋田
