胸郭と疲労

マラソンが得意な方って凄いですよね、、私はマラソンがとてもとても苦手で、すぐ疲れて休みたくなってしまいます、、、なんでこんなにすぐ疲れてしまうのか、もちろん今まで持久系の練習をちゃんとやってこなかったこともあります。今回はすぐに疲れてしまう他の要因について、「胸郭と疲労」の関係性について解説していきたいと思います❗️

疲労の原因:血中水素イオン濃度増加

そもそも疲労とは何でしょうか?スポーツの最中や直後に起こる疲労は、血中の水素イオン濃度の上昇です。マラソンや他のスポーツを行なった際にはたくさんの筋肉を活動させます。筋肉を動かすためにはエネルギー(ATP)が必要ですが、ATPを生成するために酸素が必要となります。酸素を利用してATPを生み出し、筋肉を活動させる運動を有酸素運動と言います。

短距離走などの短時間で高強度の運動では、上記の酸素を使用したATP生産では間に合わないため、最初に体内のクレアチンリン酸を分解した際に生じるATPを使用して筋肉を活動させます。しかしクレアチンリン酸によるATP供給は0〜8秒程度なため、その後は体内の糖(グリコーゲン)を分解してATPを生産します。その際に酸素は使用されないため、この酸素を使用しないでATPを産生、利用する運動を無酸素運動といいます。

糖を使用してATPを産生する方法(解糖系)では、同時に乳酸が産生され、乳酸が生成され始める運動強度を嫌気性代謝閾値いいます。この乳酸を生成する過程で同時に産生される水素イオンこそが疲労の大きな原因となります。血中の水素イオン濃度が高くなり、血中のpHが酸性に傾くと代謝性のアシドーシスとなり筋疲労を引き起こします。

胸郭が硬いと疲労しやすくなる

胸郭の可動域が低下すると、疲労しやすくなります。これは、胸郭が硬くなることで血中の水素イオン濃度の上昇へと繋がるからです。その原因は下記の3種類が大きいです。

  • 呼吸補助筋の過活動
  • 肺活量の低下
  • 最大酸素摂取量の低下

呼吸補助筋の過活動

胸郭に可動域制限が起こると胸郭のコンプラインスは低下し、努力的に呼吸を行います。コンプライアンスとは、胸郭の膨らみやすさを表しています。筋の短縮や骨的な制限により胸郭が膨らみにくくなると、コンプライアンスが低下し、筋の弾性力による受動的な呼吸が困難となり、努力的に呼吸を行います。努力的に呼吸を行うと胸式呼吸となります。胸式呼吸については別記事で解説していますので、こちらもご覧ください→呼吸と肩凝り

呼吸補助筋は胸鎖乳突筋、肩甲挙筋など首周囲の筋肉も多く含まれています。胸郭が硬くなり胸式呼吸で呼吸を行うと、首周囲の筋肉を過剰に利用するため、息切れや呼吸困難感が強く、負のフィードバックとなって自覚強度が増加します。つまり、実際に感じているよりも強く疲労感を感じやすくなってしまいます。さらに呼吸筋自体も過剰な活動によって酸素需要量が高くなり、酸素供給が追いつかないと疲労しやすくなります。

肺活量、最大酸素摂取量の低下

胸郭の可動域が低下すると、吸気量が減少し肺活量、最大酸素摂取量が低下します。これは、体内に取り込める酸素量の減少を示しており、体内に取り込む酸素量が減少すると疲労しやすくなります。上記の「疲労の原因:水素イオン濃度の増加」で説明したように酸素を利用してATPを産生する有酸素運動では、疲労の原因である水素イオンは産生されないため、疲労しにくいです。しかし、グリコーゲンを分解してATPを生み出す無酸素運動では、乳酸を生成する過程で水素イオンも同時に生成されるため、疲労しやすくなります。

酸素摂取量が低下すると嫌気性代謝閾値が低下するため、水素イオンを生成しやすくなってしまいます。胸郭の可動域低下→肺活量、最大酸素摂取量の低下→嫌気性代謝閾値の低下→血中水素イオン濃度の増加→易疲労性へと繋がっていきます。

疲れにくくするためには

これまでのことを踏まえて、疲れにくくするために行うことは

  • 胸郭の柔軟性向上
  • 嫌気性代謝閾値の上昇
  • 最大酸素摂取量の増加

この3点によって、易疲労性は軽減します。胸郭の柔軟性を向上させる方法は、胸郭周囲筋のストレッチ、呼吸の方法を変えることです。呼吸の方法とは、胸式呼吸→腹式呼吸に変更することです。胸式呼吸では首周囲や肩周りの筋肉を使用して呼吸を行い、胸郭の可動域を必要としないため徐々に胸郭が硬くなってしまいます。胸郭の可動域を改善というよりは、今以上に硬くならないように予防する効果の方が大きいですね。

最大酸素摂取量の増加、嫌気性代謝閾値を向上させるためには、持久性トレーニングを行うことです。嫌気性代謝閾値が増加すれば、無酸素運動による血中の水素イオン濃度が増加しにくくなるため、疲労しにくくなります。

終わりに

疲労の原因は様々です。今回は疲労とは何か、胸郭が硬いとなぜ疲れやすいかについて解説しました。マラソンやサッカーなど競技時間の長いスポーツと疲労は、切っても切り離せない関係です。疲労で悩まれている方は、胸郭の硬さも是非一度確認してみてください!!ありがとうございました!!

理学療法士 秋田