筋肉痛

緊急事態宣言があけて、部活動やスポーツが再開になった方も多いのではないでしょうか?久しぶりに運動をして苦痛なのが『筋肉痛』です。せっかく運動を再開しても、筋肉痛がひどくて運動をやめてしまう方も多いと思います。今回はその『筋肉痛』について説明します❗️

筋肉痛とは

筋肉痛は一般的に運動後8〜24時間後におこり、2〜3日後がピーク、その後5〜7日で消失すると言われ、筋痛覚過敏を引き起こします。筋痛覚過敏とは、筋が痛みを感じやすくなってしまう状態で、少しの刺激でも過敏に反応してしまいます。筋肉痛の原因としてよく言われているのは「乳酸の蓄積」ですね。ですが乳酸はエネルギー源にもなり、運動を行なっていればエネルギーとして代謝されます。最近の研究では筋疲労や筋肉痛は乳酸が原因ではないとされています。では何が原因か、もう一つは「筋損傷後の炎症」です。過剰な負荷により筋肉が損傷し、その損傷により炎症が生じて疼痛が出現します。筋損傷は48時間〜72時間で回復すると言われていますが、筋肉痛はその後も継続します。これだけ見ても筋損傷=筋肉痛と言い切れるのか?と疑問に思います。

筋損傷の評価

  • 筋力低下
  • 周径の増加(運動後4日がピーク)
  • CK値の増加(運動後3〜4日がピーク)
  • 可動域の低下

上記を見てみても、筋肉痛のピークである運動2日後とは解離があります。また炎症を抑える消炎鎮痛剤も筋肉痛に対しては効果が一定せず、筋痛覚過敏も筋損傷がなくても出現すると報告されています。以上のことから、一週間近く継続する筋肉痛は、筋損傷だけが原因ではないと考えられます。

2種類の筋肉痛

では何が原因で筋肉痛は生じているか、ポイントは筋損傷+神経成長因子です。まず、筋肉痛は2種類に分類することができます。1つは運動直後に出現する「即発性筋痛」、もう一つは上記でも説明した「遅発性筋痛」です。即発性筋痛は無酸素運動時に乳酸と一緒に生成される水素イオンが原因だと考えられています。水素イオンの影響により血中のphが酸性に傾き、軽度アシドーシスの症状として疲労感などが生じます。この筋肉痛や疲労感は即時的なものなので、個人差もありますがすぐに改善します。厄介なのがその後数日間継続する「遅発性筋痛」です。この遅発性筋痛の原因として考えられているのが筋損傷+神経成長因子です。

NGF(神経成長因子)

NGFとはニューロトロフィンの一つで、交感神経節後繊維、侵害受容繊維などの成長、分解に作用します。NGFは炎症時に産生が増加し、血中のNGF濃度が増加します。NGFが侵害受容繊維に作用すると、痛覚過敏な状態を引き起こします。そのため、筋損傷により炎症が生じると血中のNGF濃度が増加し、筋痛覚過敏が生じます。筋損傷自体が修復しても、血中のNGF濃度が高ければ筋痛覚過敏は生じるため、遅発性筋痛は筋損傷が回復する48〜72時間後も継続します。

遅発性筋痛の対処

  • 軽い有酸素運動、マッサージ(循環促進)
  • 休憩(創部治癒)
  • タンパク質、アミノ酸摂取(治癒促進)

NGFの説明のように、血中のNGF濃度が高くなると筋痛覚過敏が生じます。そのため、血流の循環を促すために軽い有酸素運動やマッサージが効果的です。また、筋が損傷した状態で再び負荷を与えてしまうと、筋がさらに損傷してしまいます。筋は損傷した際に新しく血管や神経を新生するため、筋が完全に治癒する前に損傷を繰り返すと損傷部には大量の血管や神経が新生され、痛みに対して敏感な状態になってしまいます。この状態を防ぐために、損傷部位を早期に治癒させる必要があります。そのための休憩であり、タンパク質やアミノ酸など栄養素の摂取が大事になります。

終わりに

筋肉痛で痛いからと言って、すぐに湿布や薬を飲む必要はありません。極端なことを言うと、ほっとけば治るのが筋肉痛です。一週間以上筋肉痛が続くようであれば、それは筋肉痛ではないかもしれないので、専門家に見てもらうのがいいかもしれません。

理学療法士 秋田