腰痛や捻挫などで病院に行くと、湿布を処方されることは少なくありません。湿布を貼ると痛みは軽減されますが、皮膚がかぶれたり、様々な副作用も存在します。今回はそんな湿布の薬理について解説します。
湿布の主な成分
- サリチル酸メチル
- カプサイン
- メントール
- 非ステロイド性抗炎症薬
湿布には上の4つの成分が含まれています。この4つは、大きく2つに分けることができます。皮膚の血流量を増加させる皮膚刺激薬のサリチル酸メチル、カプサイン、メントールと、炎症を抑えて鎮痛させる効果がある非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)2種類です。
皮膚刺激薬
サリチル酸メチル、カプサイン、メントールは皮膚刺激薬として働きます。皮膚刺激薬には抗炎症作用はありません。皮膚刺激薬のメントールは皮膚知覚神経を刺激することで内因性鎮痛機構の賦活による鎮痛作用はありますが、抗炎症作用はないため炎症を抑制せずに鎮痛を行います。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
NSAIDsは炎症を抑制することで鎮痛を行います。炎症は組織が損傷すると細胞膜のリン基質からアラキドン酸が遊離し、アラキドン酸とシクロオキシナーゼがプロスタグランジンに変換されます。NSAIDsはシクロオキシナーゼの働きを阻害することでプロスタグランジンの産生を抑制します。プロスタグランジンは炎症反応を促進させる役割をプロスタグランジンが生体内で産生されることで、ブラジキニンなど発痛物質の閾値を下げ、また視床下部に作用し、体温上昇を促す作用があります。
湿布はいつ貼るべきか?
湿布は痛みが我慢できない場合や、緊急の場合のみ貼って下さい。湿布は炎症を抑制することで鎮痛を行いますが、炎症を抑制すると損傷組織の回復が遅くなってしまいます。そのため、一時的には痛みが収まりますが、損傷部位の回復が遅くなり、痛みが遅延してしまいます。炎症は回復過程において必要な生体反応なので、毎日湿布を貼り続けて回復を阻害しないように注意が必要です。
副作用
湿布に含まれるNSAIDsは、シクロオキシナーゼ(COX)の働きを抑制し、プロスタグランジンの産生を阻害します。シクロオキシナーゼはCOX1とCOX2に分類され、COX 1は胃粘膜保護や血小板凝集に関与するため、シクロオキシナーゼの働きが阻害されると胃腸障害のリスクが高くなります。またNSAIDsにより生体内でロイコトリエンが増殖します。ロイコトリエンは気管支を収縮させる作用があるため、喘息を誘発します。現在では、COX2のみを阻害する薬も存在し、こちらは胃腸障害などの副作用のリスクは低くなります。喘息持ちや胃腸に障害を有する方は湿布を使用する際は十分に注意して、使用して下さい。
まとめ
- 湿布の成分は皮膚刺激薬と非ステロイド性抗炎症薬に分類される
- 主に非ステロイド性抗炎症薬による、炎症抑制により鎮痛を行う
- 炎症は組織回復に必要な過程なため、湿布を使い過ぎると組織の回復が遅延する
- 副作用は主に胃腸障害と喘息
終わりに
湿布は手軽に痛みを軽減させることができるためとても便利です。しかし、使い過ぎは逆に生体に悪影響を及ぼす可能性があります。また、炎症以外の痛みでは十分な効果は得られません。湿布を使用する際は使用頻度とタイミングを十分に理解して使用して下さい。
