投球障害には様々な種類があり、今後、順に投球障害について紹介していこうかと思います❗️今回はその中で「関節内インピンジメント」について紹介していきます❗️
関節内インピンジメント
関節内インピンジメントとは投球障害の一つで、投球時に肩関節の後方に疼痛を生じる障害です。疼痛は腱板が関節包内で後方関節唇と挟まれた際に生じます。関節内インピンジメントは腱板と関節唇が挟み込まれるため、2次的SLAP損傷や腱板断裂を引き起こす可能性があり、早期の発見と治療が大事となります。
どのような人が起こりやすい?
- 肩関節水平外転、外旋角度増加
- 上腕骨頭上方偏移
上記に該当する方で、投球のcooking期に肩関節後方に疼痛を訴える方は要注意です。cooking期には、肩関節が最大外旋・外転位となります。この際に肩関節が過度に水平外転、外旋すると、関節内で腱板(主に棘上筋、棘下筋)が後上方関節唇と挟み込まれ、疼痛を誘発します。また、同じくcooking期に上腕骨頭の異常な上方移動により、関節内で後上方関節唇が挟みこまれた際にも生じます。
肩関節水平外転、外旋角度増加
肩関節水平外転、外旋角度の増加は肩関節前方組織の過度な伸長ストレスが原因です。繰り返し投球動作を行うと、肩関節の前方組織(烏口上腕靭帯など)が過度に伸長され肩関節の前方が不安定となり、肩関節水平外転、外旋角度は増加します。肩関節前方組織はcooking期に最も伸長され、cooking期の最大外旋、外転を筋肉で制御できないと、靭帯や張力に依存して制御します。靭帯や張力依存で関節運動を制御すると、靭帯や筋には過剰な負荷が加わり損傷し、前方への不安定性を誘発します。前方組織が不安定となり、弛緩性を示すことで、cooking期に肩関節が過剰に水平外転、外旋し、肩関節の後方で腱板と後方関節唇が挟み込まれることで、関節内でインピンジメントが生じます。
上腕骨頭上方偏位
投球障害を有する方には、安静時、または肩関節挙上、外転時に上腕骨頭が上方へ偏移する方がいらっしゃいます。上腕骨頭が上方へ偏移すると、cooking期の外転外旋時に後上方関節包にて後方関節唇が挟み込まれるため、関節内インピンジメントを生じます。上腕骨頭の上方偏移を助長する最も多い原因は、肩関節後下方のタイトネスです。
肩関節は球関節であり、関節内で「転がり」と「滑り」運動を行います。肩関節の後下方関節包の拘縮や後下方の筋群がタイトネスな状態だと、挙上、外転時に関節内で円滑な滑り運動ができず、骨頭が前上方へ偏移します。この現象を「obligate translation」と言い、投球時に肩関節を外転した際に「obligate translation」が生じることで骨頭が上方偏位し、関節内で後方関節唇を挟み込むことで関節内インピンジメントが生じます。
評価方法
- HEAT
- fulcrum test
- relocation test
- 肩関節水平外転
上記のテストを実施した際に、肩関節後方に疼痛が出現したら陽性。fulcrum testは背臥位で肩関節最大外旋、外転させ、その後relocation testにて肩関節を前方から押さえ、骨頭の前上方偏移を抑制した状態で最大外旋、外転を行い、疼痛が消失すれば、骨頭の位置異常による関節内インピンジメントと判断できる。
治療
炎症が落ち着くまで投球の中止、その期間に肩関節、肩甲骨周囲筋の筋力、柔軟性の改善を行います。原因が肩関節後方タイトネスであれば、肩関節後下方筋群の「小円筋、棘下筋、大円筋、広背筋」が主な治療対象となります。肩関節前方組織の不安定性が原因であれば、前方組織の「肩甲下筋、大胸筋」の筋力の向上、神経筋機能の向上を行います。
TER
もう一つ注目して頂きたいのが「TER(total external rotation)」です。これは最大外旋角度のことです。TERは肩関節のみでなく、胸椎伸展(10度)+肩甲骨後傾(25度)+肩関節外旋(105度)の3要素で構成され、合計145〜150度とされています。この3要素の中で胸椎伸展と肩甲骨後傾は制限されやすいため、その分肩関節外旋で角度を補うため、cooking期に肩関節の過度な外旋が生じます。関節内インピンジメントを疑う際は、TERを確認して胸椎や肩甲骨の影響も確認する必要があります。
終わりに
関節内インピンジメントは野球だけでなく、肩関節を多用するスポーツでも確認される障害です。長期化すると関節唇損傷、腱板断裂を引き起こす危険性があるため、疑いがある場合は無理に練習を継続せず、早めの医療機関の受診をオススメします。ありがとうございました❗️
理学療法士 秋田
