成長期にトレーニングは必要か

「筋トレをすると身長が伸びない」こんな言葉を聞いたことはありませんか?成長期にトレーニングをし過ぎて筋肉ムキムキになると、確かに身長が伸びない印象はあります。今回は、成長期にトレーニングをするべきかどうか、トレーニングをすると身長が伸びなくなるか、説明していきます❗️

成長に合わせたトレーニングを

結論からお話ししますと、成長期にもトレーニングは必要です。トレーニングといっても、ウエイトトレーニングで高重量のものをどんどん持ち上げることを推奨しているわけではありません。小学生、中学生、高校生と成長に従って推奨されているトレーニングがあり、適切な時期のトレーニングや負荷量は、怪我の予防につながります。誤った負荷量、トレーニング方法が身長の増加を阻害したり、怪我の原因となるため、科学的データに基づいた適切なトレーニングを行えば、トレーニングが原因で身長の増加を阻害することはありません。

身長はどうやって伸びるか

そもそも身長はどのようにして伸びるのか、これは骨が成長しているからです。骨の成長に伴い、身長も伸びていきます。

軟骨→骨へ

私たちの体の中にある骨は、赤ちゃんの頃は全てガラス軟骨と呼ばれる軟骨でした。軟骨が成長に伴い軟骨→骨へと変化していきます。骨化には「軟骨内骨化」「膜性骨化」の2種類があり、身長の増加に関与するのは「軟骨内骨化」です。軟骨の中心が融解、変性し、ここに血管が出現し骨細胞が流入、骨細胞により変性、融解した軟骨の中心から骨化していく、この現象を軟骨内骨化と呼び、軟骨の中心から骨化されていくことを1次骨化中心と呼びます。

骨端でも同様に、軟骨が変性、融解を繰り返し、骨細胞が流入し骨化が生じ、この現象は2次骨化中心と呼ばれています。1次骨化中心、2次骨化中心より骨化が進行すると最終的に骨端表面の軟骨は残り、関節軟骨として成長後も残存します。また、骨幹と骨端の境目に骨端軟骨板が存在しており、骨端軟骨板は成長が終了すると骨端線へ変化します。

身長が伸びなくなるのはどんな時か

  • 骨端軟骨板の閉鎖(骨端線の発生)
  • 骨端軟骨板の損傷

身長が伸びなくなる原因は、上記の2つが考えられます。骨端軟骨板の骨幹部側に骨組織が付着していくことで、骨は大きくなり骨伸長が起こります。そのため、身長の増加には骨端軟骨板はとても重要な役割を果たしています。しかし、骨端線に変化する前の成長期に過剰な負荷量のトレーニングを行うと、骨端軟骨板は負荷かかりやすいため損傷し、骨の成長を阻害します。トレーニングによって身長の増加が阻害されるのは、高重量でのウエイトトレーニングを不適切な方法で行なった際や、過負荷なトレーニングを行なった際に骨端軟骨板を損傷することで阻害していると考えられます。

成長期のオーバーユースによる障害は様々で、オスグッド、有痛性外脛骨などがあります。その中で成長期の投球障害である「上腕骨近位骨端線離開」について別記事で解説しています→上腕骨近位骨端線離開

どの時期にどんなトレーニングを行うべきか

  • 〜11歳:脳神経系トレーニング
  • 12〜14歳:呼吸、循環系トレーニング
  • 15〜18歳:筋骨格系トレーニング

大きく分けると、上記のようなトレーニングが推奨されています。人間は11歳までに脳神経系が発達し、12〜14歳で呼吸循環系の機能が発達、15〜18歳で生殖器系が発達し男性であれば成長ホルモンの分泌量が多くなり筋力増強は起こりやすくなります。そのため成長曲線に合わせた時期に上記のようなトレーニングを行うことが大切です。

〜11歳までに行う脳神経系のトレーニングとは、様々な身体の動きを体験することです。例えば、一つのスポーツだけを行うのではなくいろんな種類のスポーツを行ったり、鬼ごっこなど遊びの中でいろんな動きを経験することが大切になります。12〜14歳では呼吸、循環系のトレーニングを、この時期には持久走やインターバル走など、循環機能の向上を目的としたトレーニングが中心となります。15〜18歳では生殖器系の成長に伴い、成長ホルモンの分泌量も多くなり筋肉が発達しやすく、体格が大きくなりやすいです。この時期には筋力トレーニングに対する比重を大きくしていきます。

トレーニングだけでなくストレッチも

骨が伸長し、身長が大きくなると筋肉は相対的に短縮位となります。筋肉が短縮位となると、運動時に筋肉にかかるストレスは大きくなり、オーバーユースによる成長期のスポーツ障害、オスグッドや腰椎分離症を引き起こしやすくなります。筋肉が負荷に耐えられるようにトレーニングすることも大切ですが、柔軟性を高めることで障害のリスクを減らすことも可能です。

終わりに

成長期では身長の増加に筋力や柔軟性が追いつかず、障害のリスクが高くなります。障害のリスクを減らすためにも、成長に合わせたトレーニングと柔軟性の獲得が大切になっていきます。そのためには、指導者や周囲の大人が正しい知識を知り、子供たちに伝えていく必要があります。子供たちが怪我なく精一杯プレーできるように、周囲の大人たちでサポートしていきましょう。

理学療法士 秋田