上殿皮神経障害

腰痛は、今では日本の国民病と言われるほどたくさんの人が頭を抱えており、日本人の人口の約80%が腰痛を経験しています。腰痛には様々な種類があり、その原因は多岐にわたります。今回は、腰痛の原因の中で見逃されがちな上殿皮神経障害について解説していきます。

腰痛

腰痛とは症状の総称であり、疾患名を示すものではありません。腰痛は発症からの期間により分類され、4週間未満の腰痛は「急性腰痛」、4週間以上3ヶ月未満の腰痛は「亜急性腰痛」、3ヶ月以上継続する腰痛を「慢性腰痛」と分類されます。ふとした際に腰に激痛が走るぎっくり腰、ドイツでは「魔女の一撃」とも呼ばれるほど激痛が走る腰痛は「急性腰痛」に分類されます。ぎっくり腰は早期の対処と運動療法により軽減しますが、中には重篤な脊椎疾患を有し、早急に医療機関を受診しなければならない腰痛が存在します。これらの腰痛はRed Flag(赤旗徴候)と呼ばれています。Red Flagについては腰背部痛のred-flagで解説しています。腰痛があり、Red Flagに該当される方は、その腰痛を放置せず早急に医療機関を受診してください。

上殿皮神経障害

上殿皮神経障害は腰痛の約14%を占めるといわれており、上殿皮神経が胸腰筋膜にて絞扼され、神経が牽引された際に疼痛が増悪します。ぎっくり腰後などに、痛みのために腰や股関節を動かさなくなった際に併発することが多いです。腰や股関節を動かすことが減り、殿部や胸腰筋膜が硬くなることで神経が絞扼される。症状の特徴としては
  • 上殿皮神経支配領域の疼痛
  • 棘突起から7cm外側に圧痛
  • 皮膚を伸ばすと増悪し、緩めると寛解

上殿皮神経

上殿皮神経はTh12〜L5の後神経根の皮枝が腸骨稜近傍で胸腰筋膜を貫通して殿部へ走行する感覚神経です。内側枝、中間枝、外側枝に分かれ、特に内側枝が胸腰筋膜にて絞扼されやすくなっています。内側枝が絞扼された場合に、上殿皮神経障害の一つである棘突起から7cm外側の疼痛は認めやすいです。

腰筋膜

胸腰筋膜は背部と殿部をつなぐ大きな筋膜で、浅葉と深葉に分けられます。浅葉と深葉では連結する筋肉も違っており、浅葉には広背筋、大臀筋、外腹斜筋、僧帽筋下部繊維が連結、深葉には脊柱起立筋、内腹斜筋、中臀筋などが連結しております。連結しているどこの筋肉が硬くなり、胸腰筋膜がタイトネスになっているか精査が必要です。

まとめ

上殿皮神経障害は、意外と腰痛の原因で多い印象です。腰椎椎間板ヘルニアで診断されていても、その腰痛の原因はヘルニアではなく、上殿皮神経障害なんてこともよくあります。デスクワークなど、腰や股関節を動かす習慣が少ない人ほど発症するリスクは高くなるので、日々のケアを大事にしてきましょう!