カルシウムパラドックス

カルシウムパラドックスという言葉を聞いたことがあるでしょうか?

Caの摂取が不足すると血中や軟部組織にCaが増え様々な病気が起こることです。

 

学生の頃の内分泌の授業でカルシウムという栄養素が、重要だということは教わりました。

カルシウムに関与するホルモンが他の栄養素に比べると多いから。筋肉(心筋も)を動かのに必要だから。

常に一定の濃度を血中で保たなければならないから。まあその変のレベルの事を学びました。

なぜここにきてカルシウム代謝を少し深めに学ぶかというと3つ理由があります。

  1. 若年層の怪我が多いと感じる
  2. 石灰沈着性腱板炎があるなら他の腱や組織にもあるのではないかと思った
  3. 筋収縮にも関与するカルシウムイオンが痛みとの関連があるように思った

ここで簡単にCa代謝に関わるホルモンをおさらいすると

  1. PHP(副甲状腺ホルモン)・・・血中カルシウム濃度が下がると骨吸収を促進する。
  2. ビタミンD(活性型ビタミンD、1,25(OH)D)・・・ビタミンDは副甲状腺に働いてPHTの分泌、合成を抑制する。また腸管ではカルシウムとリンの吸収を行う。
  3. カルシトニン・・・破骨細胞に作用して骨吸収を抑制する。

次にカルシウムに由来する運動器疾患を挙げていきます。

  • 結晶誘発性関節炎
  • 異所性骨化

結晶誘発生関節炎には種類があり

  • 痛風(尿酸ナトリウム)
  • 偽痛風(ピロリン酸カルシウム)
  • 石灰性関節周囲炎(ハイドロキシアパタイト 塩基性リン酸カルシウム)

が代表的です。

この中でも偽痛風と石灰性関節周囲炎はカルシウムとの関連性ああります。

異所性骨化は本来なら骨組織がない場所で異常に骨形成が行われる現象です。

筋組織内での骨化がよく知られていると思います。

ここまでが一般的に知られている事です。ここからは症例から考えていきましょう。

ジャンパー膝

膝蓋腱に繰り返し加わる負荷で微小損傷を起こし炎症、組織の変性が起こるものです。

しばしば腱中に石灰沈着が見られる事もあります。(もしかしたら脂肪体かもしれない)

石灰沈着がジャンパー膝の中でも最も悪い状態を指すなら、少なからずその方向に進んでいるのではないでしょうか?

画像で石灰沈着が無くとも、すぐに治らないものはカルシウム的なものが集約しているのではないのか?

と考えました。

夜間痛がある凍結肩も同様に考えます。エコーやレントゲンで石灰画像が出なくともその方向に向かっていると考えるべきです。

そうなればどんな障害でもありうるのではないでしょうか?異所性骨化も打撲や外傷が原因で起こりますが、

打撲などで悪化の先に待っているのは異所性骨化です。

少し脱線しますが、石灰沈着生腱板炎にH2受容体拮抗薬が効果がある場合があります。

1979年にシメチジンを原発生上皮小体機能亢進症に投与し、副甲状腺ホルモン(PTH)や血中のカルシウム濃度が正常化したことがはじめだそうでうす。

作用機序としては抹消ヒスタミン受容体に作用してPTH代謝に関与しているのではないかと推測されます。

 

ここでようやくカルシウムparadoxを考慮します。

上記の様な単純なメカニズムではないでしょうが、組織の損傷(微小損傷を含む)があり、血中のカルシウム濃度が高くなれば石灰化する可能性が高くなります。

血中のカルシウム濃度が高くなるには

  • カルシウム不足による血中カルシウム濃度の低下によりPTH亢進し骨吸収促進
  • ビタミンD低下(カルシウム再吸収減少、PTHの分泌合成の抑制力が低下)
  • 骨粗鬆症による血中カルシウム濃度の上昇

上記を事柄で表すと

  1. 栄養バランスの偏りによるカルシウム不足、腸の不調によるカルシウム再吸収の低下でPTH亢進
  2. 日光に浴びない事によるビタミンD低下(日焼け止め・体育館・リンクでのスポーツ)
  3. 閉経後の骨粗鬆症 です

どれか一つだけでは無く複合的にかつもっと複雑な問題だとは思いますが、栄養バランスが重要なことは明白です。

かといってカルシウムのサプリメントを摂取すればいいという様な単純なものでは無いと考えます。

基本的にカルシウム濃度は一定で無いといけません。微妙な調整を必要とするためホルモンが複数存在します。

よってバランスの良い食事が無難なわけです。牛乳や砂糖が悪いという考え方もありますがそこは個人に任せましょう。

ただ無駄に糖質と過剰に取ることはカルシウム代謝に良くはないと断言していいでしょう。

 

若年層は怪我をしやすい、怪我が治りにくい。体が昔に比べると弱くなった?

何を以ってそういうのでしょう?損傷程度?ROM?正常動作をしていない?違います。

痛みです。痛みを訴えるから怪我をしているし痛みを訴え続けるから怪我が治りにくいのです。

そこにメンタル的な要素を入れてしまうと考える意味がなくなるので省きます。

基本的には疲労性のものも寝れば治るはずです。オーバーユースもなる人間とならない人間がいます。

当然フォームの問題や個人の練習量にもかなり左右されますが。

 

スポーツで微小損傷を起こし、栄養バランスが悪い、あるいは過剰に砂糖類を摂取している。

そうなればカルシウム代謝に異常を起こし、血中カルシウム濃度が上がってしまう(骨吸収促進)。

画像で石灰化を起こしている訳ではないがそれに近い状態が起きて治りにくい障害を起こす。

 

栄養学の生理作用を知ることは必要です。しかし体にいいか悪いかなどは人によって異なります。

糖質をエネルギーとして使う際にビタミンB1が必要です。常識レベルで必要な知識です。

そういった生理作用を駆使してバランスの良い食事を心がける必要があります。

バランスを心がけた中で色々調整し、一人一人にあった食事を見つけるべきだと考えています。

 

まとめ

カルシウム代謝が痛みと関連している可能性がかなり高い。